デザインとアートはどう違うのか。私たちデザイナーの間ではしばしば語られる話題です。様々な考え方があるので皆が納得する答えは無いのかもしれません。まして無関係の人にとってはどうでもいいことでしかありませんね。

私が思うアートとデザインの違い(あくまで私感ですが…)

私が思うアートとデザインの違いは簡単明瞭です。制作物が「主観」か「客観」のどちらに基づいているかです。

アートは自己表現であり自己満足の産物です。アーティストは芸術性を押し付けますが、それを評価するのは観る側の自由です。アーティストにとっては他人の評価はあまり問題ではなく自己の中で芸術性が完結されれば満足なのです。そしてそれを生涯にわたって追求し続けます。

つまり生み出される制作物はすべて「主観」に基づいています。※依頼されて描くアートは例外とします。

アーティストの中には作品を手放さない人もいます。売り物ではないという考え方です。私が知る限りの歴史の中では生活に困窮しながら、また、妻や恋人に養ってもらいながら絵を描いていた芸術家が数多くいます。もちろん生前に認められて裕福な生活を送っていた人もいますが、目標がそこではないので彼らにとっては大した問題ではないのです。

このように金銭を第一の目的にしていないというのもアートの大きな特長です。

ではデザインはどうでしょう。デザインは最終目的にお金が関係します。デザイナーは対価をいただいて生計をたてている職業人です。つまり対価を支払ってくれるクライアントの利益を最優先に考えなくてはなりません。

クライアントに利益をもたらす、言い換えれば、広く多くの人に共感を得てもらう事を念頭につまり「客観的」に制作物に取り組まなくていけません。

デザインのアート性

では本題のお話です。デザイナーの中にはアートに興味があったり、アートを趣味にしていたり、そもそもデザインとアートを混同してデザイナーになった人などもいます。

これまでアートとデザインは根本から違うというお話をしました。しかしアートとデザインが交わる部分もあります。多くのデザイナーはデザインの本質を理解しながら、その交わる部分で何かしら自己表現をしようと知恵を働かせています。その小さな部分で自己満足をするしかないのです。

その交わる部分のみがデザイナーがデザインにアート性を持たせる事が許される部分です。制作物をトータルで見たときにそのアート性がデザイン要素の一つの部品になり得れば成功です。もちろんデザインで扱う制作物の中にはその要素さえも盛り込めないものも多くあります。

デザインにアート性は必要なのか

結論としてのお話です。デザインの目的が「クライアントに利益をもたらす」ということですので、その目的から外れないものであればアート性を入れても問題ないと思います。むしろその目的を昇華させるものであればアート性は必要だともいえます。

私たちデザイナーが心がけなくていけないのは、常に客観的に制作物を企画構成し、クライアントに利益をもたらすことを最優先に考える事です。そのための要素として盛り込むアート性であって、独りよがりで自己満足のアート性を押し付けてはいけないということです。